「擬音語」と「擬態語」の違い
日本語には、音や様子を言葉で表現する独特の表現方法として「擬音語」と「擬態語」が存在します。これらはどちらも擬似的な表現であり、実際の音や状態を模倣して、より生き生きとした描写を可能にするものです。しかし、この二つは似ているようでいて、表している対象や働きに明確な違いがあります。
まず、「擬音語」は実際に聞こえる音を真似て言葉にしたものです。例えば、犬の鳴き声「ワンワン」や、ドアが閉まる音「バタン」、雨が降る音「ザーザー」などが挙げられます。これらは現実の世界に存在する具体的な音を、そのまま音声的に再現し、視覚ではなく聴覚に訴えかける表現です。
一方、「擬態語」は、音のない状態や動き、感情、雰囲気などを音で表す言葉です。たとえば、人が緊張している様子を「ドキドキ」、物がふわふわしている様子を「ふわふわ」、無気力な様子を「だらだら」といった具合に、実際には音のしない現象を、あたかも音があるかのように表現します。これは日本語特有の感性が生み出した表現方法で、目に見えない「感じ」や「印象」を言語化する力に優れています。
つまり、「擬音語」は現実の音を写し取った言葉であり、「擬態語」は音を持たない現象や様子を音のように感じさせて伝える言葉だと言えます。どちらも感覚的な表現ではありますが、前者は「聞こえる音」に基づき、後者は「聞こえない感覚」を音でなぞらえている点で、大きく性質が異なります。この違いを理解することで、日本語の豊かな表現力や奥深さにより深く触れることができるでしょう。
それぞれの意味
「擬音語」の意味
「擬音語」は、現実の音や物音を模倣して作られた言葉を指します。人間や動物の声、物がぶつかる音、自然の中の音など、実際に耳で聞き取ることのできる音を、そのまま音声化して再現しています。
- 自然界や生活の中にある「聞こえる音」が対象
- 音を模倣し、聞いた印象をそのまま言葉に変換している
- 主に視覚よりも聴覚に訴えかける表現
たとえば、雨の音や足音、動物の鳴き声など、誰もが音として認識できる現象が「擬音語」として表現されます。このような語は、臨場感を持たせたり、動きのある描写をリアルに伝える際に効果的です。
「擬態語」の意味
「擬態語」は、音を持たない感情、動作、状態、雰囲気などを、あたかも音があるかのように音声的に表現する言葉です。実際には音がしないため、聴覚では捉えられない内容ですが、話し手の主観や感覚を表現する手段として用いられます。
- 音のない動きや感情、様子などが対象
- 五感のうち、特に視覚や触覚、感情に訴える
- 身体的・心理的なニュアンスを音のように表す
たとえば、心の高鳴りや、物の柔らかさ、人物の様子など、形のないものを想像させるのが「擬態語」の特徴です。これにより、聞き手や読み手は状況をより感覚的にイメージすることができます。
「擬音語」と「擬態語」の使い方・使用例
「擬音語」の使用例
- 犬が「ワンワン」と吠える
- ドアが「バタン」と閉まる
- 雨が「ザーザー」と降る
- 時計が「チクタク」と鳴る
- 太鼓が「ドンドン」と鳴り響く
「擬態語」の使用例
- 胸が「ドキドキ」する
- 布団が「ふわふわ」している
- 彼は仕事を「だらだら」している
- 猫が「そろそろ」と歩く
- 子どもが「にこにこ」笑っている
「擬音語」と「擬態語」に似た言葉
- 擬声語:人や動物の声、鳴き声などを模倣した言葉。たとえば「ニャー」(猫の鳴き声)や「ブーブー」(豚の鳴き声)など。
- 擬情語:感情の動きを音的に表現した言葉。喜怒哀楽などの心理状態に焦点を当てており、「イライラ」「ワクワク」などが該当する。
- 擬容語:物の様子や形状を音的に表現した言葉。たとえば「キラキラ」(光り輝く様子)や「ゴツゴツ」(表面がでこぼこしている様子)など。
- オノマトペ:擬音語や擬態語、上記のような語を総称した言葉。日本語以外でも存在し、音の模倣や感覚の表現を目的とする音象徴語の総称。