「ラム」と「マトン」の違い
食肉としての「羊肉」は、日本ではあまり日常的ではないものの、世界各地では広く親しまれている食材の一つです。その羊肉にも種類があり、代表的なものが「ラム」と「マトン」です。どちらも同じ羊から得られる肉ですが、この2つの呼び方には明確な違いが存在します。
もっとも基本的な違いは、羊の年齢によって区別される点にあります。「ラム」は生後1年未満の子羊の肉を指し、肉質は柔らかく、クセが少ないのが特徴です。一方で、「マトン」は生後1年以上の成羊の肉であり、赤身が強く、独特の香りや風味があるため、好みが分かれる傾向にあります。この年齢による分類は、食感や味わい、調理法にも大きく影響を与えるため、料理を選ぶ際の重要な判断材料となります。
また、国や地域によっても「ラム」と「マトン」の扱いや評価には差があり、たとえばヨーロッパでは「ラム」が高級肉として重宝される一方、インドや中東などでは香辛料を活かした「マトン料理」が多く存在し、日常的に消費されています。こうした文化的背景も、「ラム」と「マトン」の違いをより立体的に理解する手助けとなるでしょう。
このように、「ラム」と「マトン」は単なる呼び方の違いではなく、羊肉の性質や使われ方に大きな影響を及ぼす要素です。
それぞれの意味
「ラム」の意味
「ラム(lamb)」は、一般的に生後12か月未満の子羊から得られる肉を指します。厳密には、永久歯がまだ生えていない若い羊が対象とされる場合もあります。この肉は繊維が細かく、脂肪の質もやわらかいため、調理するとしっとりとした食感と上品な味わいが楽しめます。
また、「ラム」はその柔らかさと淡い香りから、羊肉初心者にも親しまれやすい存在とされています。日本を含む多くの国で、「羊肉」といえばまず「ラム」を思い浮かべることが多いのは、この食べやすさによるものでしょう。
料理に用いられる際も、「ラム」は高温で素早く火を通すようなレシピに適しており、肉本来の旨味を引き出しやすいという特徴があります。詳細な使用例は次章で紹介しますが、ここではその性質上、調理の自由度が高い肉であるという点だけ押さえておきましょう。
「マトン」の意味
「マトン(mutton)」は、一般に生後1年以上の成長した羊の肉を意味します。とくに2歳以上のものを指す場合もあり、これは肉の風味や繊維の質に関係しています。マトンの肉質はラムと比べてしっかりしており、赤身が強く、脂肪にもコクがあるのが特徴です。
このため、以下のような特性が見られます。
- 香りに個性があり、強めのスパイスやハーブとの相性が良い
- 長時間の煮込み料理などに向いており、旨味が深まる
- 料理文化によっては日常的に使われ、高タンパクな食材として重宝される
マトンはその濃厚な風味ゆえに、好みが分かれやすい食材でもありますが、逆に言えば、羊肉の力強さを存分に楽しみたい人にとっては魅力的な選択肢です。また、ラムに比べて価格が手頃な場合も多く、コストパフォーマンスの良さでも注目されることがあります。
両者の違いを単に「若いか、成熟しているか」と捉えるだけではなく、味や香り、料理との相性といった観点からも理解しておくことで、より適切に使い分けることができるようになるでしょう。
「ラム」と「マトン」の使い方・使用例
「ラム」の使用例
- 「ラムチョップが人気のフレンチレストラン」
- 「スーパーでオーストラリア産のラム肉を購入した」
- 「この料理はラムの香ばしさが決め手です」
- 「バーベキューにはラムステーキが合う」
- 「ラムカレーはスパイスとの相性が抜群」
「マトン」の使用例
- 「本格的なマトンカレーが食べられるインド料理店」
- 「マトンの香りがクセになるとファンも多い」
- 「北海道のジンギスカンはマトン肉が主流」
- 「マトンシチューはじっくり煮込むのがポイント」
- 「スパイスを効かせたマトンケバブが絶品だった」
「ラム」と「マトン」に似た言葉
- ホゲット(hogget) 生後1年から2年未満の羊の肉を指す言葉。ラムよりも風味が濃く、マトンほど強いクセはない。オーストラリアやニュージーランドでよく使われる。
- ジンギスカン 羊肉を使った日本の鉄板料理で、料理名そのもの。肉の種類によりラムジンギスカンやマトンジンギスカンと表記されることがある。
- シープミート(sheep meat) 一般的に「羊肉」全体を表す総称で、ラム・ホゲット・マトンすべてを含む表現。業界用語や輸出入の際に使われることが多い。
- ベビーラム(baby lamb) 生後数か月以内の非常に若い子羊の肉。とくに柔らかく、風味も淡白で高級食材とされる。
- ゴート(goat) 羊ではなく山羊(やぎ)の肉を指す言葉。インドやカリブ、アフリカなどで広く消費されており、マトンと混同されることもあるが、別の動物の肉である。