「クレヨン」と「クレパス」の違い
子どもから大人まで、多くの人が親しんできた画材の中に、「クレヨン」と「クレパス」という言葉があります。見た目や用途が似ているため、両者を混同して使う人も少なくありませんが、実際にはその性質や製造方法に違いがあります。
まず大きな違いは、その成分と描き心地にあります。クレヨンは主に顔料と蝋(ろう)を原料としており、描いた線がやや固く、カサついた質感を持っています。これは、表面に薄く色を乗せるような描き方になるため、細かい描写や輪郭線を描くのに適しています。一方、クレパスは顔料に加えて油分(ワックスではなくオイル)が多く含まれており、柔らかく、なめらかに広がるのが特徴です。そのため、指でこすってぼかす「描き伸ばし」や色を重ねる「重ね塗り」など、より絵画的な表現が可能になります。
また、呼称の違いにも注目する必要があります。「クレパス」は実は商品名であり、株式会社サクラクレパスが開発・商標登録しているものです。つまり、すべての油性パステルが「クレパス」と呼べるわけではなく、他社製の同様な画材は「オイルパステル」や「油性クレヨン」と表記されるのが一般的です。一方、「クレヨン」は一般名称として広く使われており、特定の企業に限定された名称ではありません。
このように、両者には材質、描き心地、そして呼称の上でも明確な違いがあります。ただし、どちらも色彩表現の入り口として親しまれ、創造力を育む道具としては共通しています。それぞれの特徴を理解することで、より目的に合った表現が可能になり、創作の幅も広がるでしょう。
それぞれの意味
「クレヨン」の意味
クレヨンとは、顔料をワックス(蝋)と混ぜて棒状に固めた描画材を指します。主に紙に色を付ける目的で使われ、小さな子どもが使いやすいように硬めに作られていることが多いのが特徴です。
その語源はフランス語の「crayon(クレイヨン)」で、本来は鉛筆全般を意味する言葉ですが、日本では特に蝋でできた着色用の棒を指す意味で使われています。市販されているクレヨンには、鮮やかな色が多く揃っており、輪郭を描いたり、単色で塗る用途に向いています。
クレヨンの性質上、重ね塗りや混色にはあまり向いていないものの、線がくっきりと出やすく、対象の輪郭や図形などを描写する際に便利です。また、汚れにくく、折れにくいため、幼児教育でも多く利用されています。
「クレパス」の意味
クレパスとは、油分を含んだクレヨンとパステルの中間のような性質を持つ描画材で、より絵画的な表現に適した道具です。日本で初めて「クレパス」という名称を使用したのは、1925年に創業された株式会社サクラクレパスで、商品名として商標登録されています。
クレパスは「クレヨン」と「パステル」の特徴を融合させた画材であることから、その名称はそれぞれの単語の一部を組み合わせた造語です。
- 「クレ」=クレヨン(Crayon)
- 「パス」=パステル(Pastel)
このように、クレパスは発色の美しさや柔らかさが特徴で、紙に滑らかに色が乗り、混色やグラデーションも比較的容易に行えます。美術教育の現場やアート作品の制作において、幅広く使われている素材です。
なお、「クレパス」は本来固有名詞であるため、他社の同様の画材は「オイルパステル」と表現されることが多く、呼称の使い分けには注意が必要です。
「クレヨン」と「クレパス」の使い方・使用例
「クレヨン」の使用例
- 幼稚園で子どもたちがクレヨンを使ってお絵かきをする。
- 塗り絵ブックにクレヨンで色を塗る。
- 家庭用の知育教材として、クレヨンがセットに含まれている。
- 児童が図工の授業でクレヨンを使って風景を描く。
- 手作りカードやポスターにクレヨンでカラフルな装飾を加える。
「クレパス」の使用例
- 小学校の美術の授業でクレパスを使って色を重ねる練習をする。
- アート教室でクレパスを使ってグラデーションの表現方法を学ぶ。
- クレパスを使った抽象画の制作に取り組む。
- 展示会でクレパス画の作品が紹介される。
- ポスター制作でクレパスを使い、色の濃淡を指でぼかして仕上げる。
「クレヨン」と「クレパス」に似た言葉
- 色鉛筆:芯に顔料を含み、木の軸に包まれた筆記具。細かな描写や線画に適しており、消しゴムで部分的に修正できる点が特徴です。
- パステル:顔料を粉状にして少量の結合材で固めたもの。ソフトパステルとハードパステルに分かれ、鮮やかな発色と繊細な表現が可能です。
- オイルパステル:油分を含んだパステルで、クレパスと非常に似ています。混色や重ね塗りに適しており、滑らかな描き心地が特徴です。
- 水彩絵の具:水で溶いて使う絵の具で、透明感のある色彩が特徴。筆を使って描画し、にじみや重ね塗りなど幅広い表現が可能です。
- マーカー:インクを染み込ませた筆記具で、均一な線やベタ塗りが得意。発色が強く、イラストやポスター制作によく使われます。